第3話

ハイレグがスイムショーツにもたらしたもの



 ハイレグ。私たちが今日、何の不思議もなく使うこの名が水着の世界に登場したのは、85年だった。
 最初の年、ハイレグは完全な失敗で、随分売れ残りが出たようだった。「ハイレグ?あれはだめよ、物欲しそうに見えちゃうから。」という女性の意見を載せていた男性雑誌もあった。足の短い日本女性には合わないのか?いや、短いからこそ足長に見えるハイレグがいいのだ、などといった議論もあったが、芸 能人ならともかく、一般への普及は難しく、消えていくものと思われた。
 だが、どっこいハイレグはじわじわと普及していった。バブル期のディスコでの裸同然の姿や、オリンピックでの水泳選手の水着などで、ハイレグそのものへの抵抗感が薄れていったのだろう。また、この10年間の女性の体格の向上は、生物の進化の原則では説明できないスピードではあるまいか、決して過大な表現とは思わない。

 さて、ハイレグ水着の普及でスイムショーツはどう変わったか?以下の様な点があげられよう。
  1. スイムショーツの種類が増えた。
  2. 「はみ出し」の位置が変わった。
  3. 男性の着用派には不都合が多くなった。
以下順に考察していこう

 1.のスイムショーツの種類であるが、当然、従来の形の水着がなくなった訳ではないので、ローレグ用も残っている。確信を持っては言えないのだが、例えば、池袋西武デパートの水着売場のスイムショーツには「1」から通し番号が打たれているが、昨夏、私が確認した限りでは、「24」まであった。この時点では「16」程度だった様に思う。新規参入メーカーもあろうが、増えた分は、ハイレグ分と見て間違いない。また、同一メーカーでもハイレグタイプの割合を増やしているので、80年代から見ると、随分バリエーションは豊富になったと言える。その一方で、いかにも女の子の下着といった印象の、普通のスイムショーツは片隅に追いやられている。

 2.のはみ出しだが、ハイレグの登場まではヒップの部分に、つまり水着の下に見えていた。だから、女性はいつも水着の裾を気にしているのだが、ハイレグ用は股上が深いために、腰の方、またはサイドにはみだして見える事も多くなっている。いずれにせよ、ハイレグは下半身に露出部分が多くなるので、はみ出しの確率は当然高くなる。
 ここに、形の合わないスイムショーツが水着からはみ出した例があるので見て頂こう(右写真)。CCガールズのLD”BODY LANGUAGE1991”(LD番号はポニーキャニオンPCLP−00324)のジャケットである。私の見るところ、ハイレグ用のスイムショーツの様だが、黄緑の水着の方が更にハイレグなので、はみ出している訳で、こうした事はそれまでの水着ではありえなかった。それにしても、こうした写真をありがとうと、とりあえず関係者に感謝しておこう。

 3.だが、ハイグ又はスーパーハイレグスイムショーツはどうも男の着用派には向かない。切れ込みが深いから、それこそ「はみ出し」が多くなってしまうが、それはまぁ、褌の様にして納める事にしても、不都合はまだある。まず、サポート力が弱い。なぜなら通常品(今では、ノーマルレッグなどと表示される)なら、ヒップを覆うので、程度の差こそあれ、ヒップアップのために締め付けと引き上げ力があった。(この締め付けやヒップアップもスイムショーツの機能の一つといえる)が、ハイレグはいわゆる「半ケツ」なので、こ れらの機能がほとんど備わっていない。
 おまけにサイド部分はほとんどの場合ヒモになるので、茶色、水色等ベージュ以外の色の製品をやっと見つけても、プールではすぐ女性用だとバレてしまう。一度だけ、あるクワハウスで、先ずサイドがヒモの男性用ビキニで泳いでおき、次いで茶色のハイレグスイムショーツに穿きかえて泳いだが、水に入ったとたんこれはだめだと、すぐ上がらざるを得なかった。泳いでもはみ出さないようにしたければ、背泳するしかない。それは無理だ。もっとも、これは、私のようなスイムショーツを水着代わりにする趣味の人間以外には、あまり関係ないけれども。

 ハイレグ水着とは、下にショーツをする人種のために作られたものではないのかもしれない。でも、この80年代後半、ハイレグスイムショーツのおかげで私のスイムショーツ収集の対象が増え、停滞気味だった私の趣味は、再び盛り上がって行くことになったのだった。

 では、次回は第4話「透けない水着と透けないスイムショーツ」。
 尚、次回にてこの「スイムショーツよもやま話」は最終回である。(PART1の、な)



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