第4話

透けない水着と透けないスイムショーツ



 前回のハイレグと同様、白い水着は長い間、我々には「特殊なもの」だった。第1話で山口百恵の白い水着の話をしたが、70年代後半に水着メーカーが白い水着をバリエーションに加えたことがある。その頃は、セシールのスイムショーツに、「白のスイムショーツをお召しの方は、弊社No.1200のショーツをお買い求め下さい。」とある様に、スイムショーツも通常のものとは変えるという、それなりの準備と心構えが必要だった。水に入れなければ何とか大丈夫だが、濡れたが最後「丸見え」だからだ。この、No.1200というスイムショーツをすれば、ヘアが透ける心配は低減するが、スイムショーツの方が問題だ。全体が分厚い綿で出来ており、およそ「スマートな水着姿」というのとは、ほど遠い姿をさらすことになる。それでも当時、他に選択肢はなかった。
 さて、白い水着は何故透けるのだろう?いや、「透ける」とは、そもそもどう いうことなのだろう?

 透け、とは繊維が光を通過させてしまうことである。(逆か?光が繊維を通過するというべきか)「白」は特にこの光の通過率が高いので向うが見えるのである。水着は濡れるから、繊維と肌が密着し、ますますこの透過率があがってしまう。そこで、その繊維の間にポリマーを混入し、光の通過率を下げれば、透けにくくなるだろう、という発想で新たな繊維が開発された。製品名は、「ボディシェル」。技術発表は93年。製品は94年から出荷され、その年の「日経流通新聞」ヒット商品番付の前頭に入っている。しかし、このヒット商品番付は、対前年比の伸びでランキングしているので、実際に販売数量(即ち、着用数)が大幅に増え、白い水着を普通に見かける様になるのは、95年位か らだろう。
 もっとも、多くの人が指摘している様に、「透けない」のではない。「透けにくい」というべきであろう。スイムショーツの着用は必須である。
 ここに好例があるので見ていただこう。ボディやスイムショーツそのものが透けて見えてしまう訳ではないが、ラインの浮き上がり方は従来と同様なのはご覧の通り。モデルは、YUKIKOというレースクイーンである。(右側の写真は、ブラウザの解像度で分かるか?現物では、スイムショーツのサイドのヒモがハッキリ見えるのだが)

 透けない水着は発売されたものの、スイムショーツの方は旧来通りだった。着用する女性の方もまだ心配なのか、私の見たところ、上記のセシール1200であるとか、D&M(やめてくれ〜)をしている娘が多かった。水着の開発に遅れること2シーズン。ようやく、95年からリョーカが、159803という型番で、水着と同じ素材を用いたスイムショーツを発売した。うれしいことに水着に合わせて白(ベージュもある)が作られた。96年にはビキニタイプの159802も登場、セシールも「ボディシェル使用」をうたった新型No2100を発売し、ようやくここへきてそうしたスイムショーツをしている娘が増えてきた。(水着と違い、スイムショーツは必ずしも毎シーズン買い換える訳ではないので、どうしても遅れる様である)
 尚、本ホームページの趣旨ではないが、男性用の海パンも同様の素材を使用し、白一色の、ブリーフと見まごうばかりのものが発売されているのは諸兄もご存じだろう。今やミズノの総本山、エスポートなどでは、海パンのディスプレイが8列あったとすれば、2列は白になっている。で、私はプールへ行くと必ず、この白い海パンとリョーカの白いスイムショーツを穿き変えて1回は泳いでみるのだが、スイムショーツ1枚でも全く問題はない。むしろ、海パンの方が透けが目立つくらいで、女性用はやはり良くできていると思う。(盛り上がるのはビキニの海パンでも同じ)着ている本人にしか分からぬ密かな楽しみは、しばらく続きそうである。

 以上、本当に大まかですが、ここ20年の「スイムショーツの歩み」を語らせて頂きました。PART1はこれまでです。PART2の構想は出来ていますので、「カミング・スーン」とだけ言っておきましょう。では、又。



目次