さて、「SPEEDO」(ミズノ)の第2回は、生産中止になった第1シリーズ(83SS-10と20)に代わって発売された第2シリーズ(83SS-50と60)から現在に至る流れを見て行こう。題して「カラースイムショーツの挫折」である。
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第1シリーズは、市場から(つまり女性から)必ずしも受け入れられたとはいえない。ミズノ系列の店以外ではまず見かけなかったし、置いてある店でも紙製の箱がつぶれたりしているのをよく見かけた。でも、新製品は発売された。まず見て頂こう。スタンダードとビキニを色別に並べてみた。 83SS-5021と6021、ブルーのビキニとスタンダード。 | |
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| ついでピンク。前回紹介しているので裏返してみた。83SS-5064と6064である。 | |
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| さらにイエロー5046と6046。 | |
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| これらの型番の法則は、前回と同じなので前回を参照して欲しい。 | |
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ブラックだけは、第2シリーズのみである。競合製品への対応だろうが、「83SS-5009」、つまりブラックのビキニの存在は不明。 尚、ベージュは持っていないので省略。 |
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前回と見比べてもらえば分かるが、第2シリーズのパッケージは、紙箱からビニールパックに変更になっている。第1シリーズでの、つぶれや汚れの問題に対応したものかも知れない。しかし、第2シリーズは決してパッケージ変更のみでない。 形についても、まず縁のフリル(というのかな)がなくなっているし、穿けば、前より締めつけ感が強くなっている事がわかる。この点で、個人的には「ああ、俺は今、女物を着用しているんだ」という気分は、第1シリーズより大きく後退していると思う。でも、当の女性は気がついてもいないだろうが。ただ防透けについては、どちらも同じで、全く防透けにはならない。つまり、このSPEEDOのスイムショーツを着けてボディが透けて見えないなら、着けなくても透ける事はない。その位のものである。(この時代のポリエステル製のスイムショーツは、皆そうだ) 第2シリーズは定価1100円だが、定価で売られていたのはわずか2年ほどであり、3年目からはバーゲン品になった。それも第1シリーズがバーゲンでも850円が500円になっただけなのに、第2シリーズは200円になった。よほど早く売ってしまいたかったのだろうか。 そのバーゲン会場で、多分近くの大学の運動部であろう学生2人が 「おっ。サポーターが200円。安いじゃん。」 「せ、先輩、これレディースのビキニですよ。ピンクだし。」 「ああ、それじゃだめだな。」 彼ら2人を見送ってから、私はこれら10枚を購入した。 そしてその後、カラースイムショーツは姿を消し、SPEEDOのスイムショーツはベージュだけになってしまった。 |
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そんな94年に店頭で初めて、この「83SS-1049」を見かけた。SPEEDO初のTバックショーツ(製品の表示は「ハイレグ」)である。コットンの様に見えるかも知れないが、ナイロンとポリエステル製である。この型番、もうお分かりだろう。 そう、第1シリーズのベージュのビキニと同じである。同一の番号ということは、もう、第1シリーズの製品は在庫もなく、二度と生産しないという事に他ならない。私の愛したスイムショーツは帰ってこないのだと思うと悲しいが、スイムショーツ売場で涙ぐんでいてもしょうがないので、品物をレジへ持って行く。 「これ下さい。」 「じょ、せいようですが・・。」 「いいです。」 スイムショーツはかわっても、これだけは変わらないよな。 尚、このパッケージでは中身のショーツは裸だが、最近の物はビニール袋に入っている。こんなに小さくて1,300円は高いと思う。 | |
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| これが、(あまり紹介する気にならないのでフロントのみ)現在のSPEEDOの製品である。 | |
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品物を目の当たりにして、諸兄はすでにお分かりと思う。このようなビニールパックで中身が丸見えの(それもたとえばピンクの)スイムショーツは、やはり女性は買いにくいのではなかろうか。カップルで買いに来た場合はまずだめだし、レジが男性ならこれも遠慮するだろう。このあたりが、第2シリーズ失敗の最大の原因と思われる。その他にも、80年代から変わらないこの形では、90年代のハイレグ競泳水着には対応しにくかったという事もある。ミズノが処分を急いだのも、このあたりに原因がありそうだ。 それにしても、カラースイムショーツは、なぜ愛されないのだろう。男性から見れば、想像して欲しい、白い水着の下にピンクのショーツが透けて見えていたら、「かわいい」と思うのが(無論、相手によるが)普通ではないだろうか。でも女性の感性はそうではなく、はみだしたりしたら、ベージュよりかなり目立つといったことが頭をよぎるのだろう。このあたり、「普通の下着」と「秘密の下着」の相違だろうか。 でも、最近はミズノも含め、水着もスイムショーツも素材が変わったりしてきているのだから、SPEEDOもまた、カラー物の企画が持ち上がるかも知れない。それが何年先でも、我々はその時を待つしかあるまい。 |