Part2 第7話

ピーターパン



 今回は、メーカーではなく「ピーターパン」というブランドを歴史を追って見て行く。
 製造メーカーは(株)岸田と(株)ミューラーンの2社である。ピーターパンの歴史を振り返ることは、ここ20年のスイムショーツを俯瞰(ふかん)することに他ならない。


 普通ならここでショーツが出てくるところだが、今回はパッケージを単独で出してみた。紫の箱、水着を着ようとしている下半身のイラスト、「Peter Pan」の文字。70年代にスイムショーツと言えばこれ、というくらいどこの売場でも見かけた製品である。
 この頃は、若い女性の海外旅行ブームで、デパートでは四季を通じて水着を展示しておくようになったその走りの時代で、夏場は数種類あるスイムショーツも、冬はピーターパンだけというところが多かった。

 これも確かそんな真冬に買った物である。もっとも私は、海外旅行でなく温水プールで泳ぐためにビキニの海パン用に買ったのだが。





 このNo.701は、ご覧の通り股上が浅く、サイドが細く、そして防透けには全くならないナイロンとポリエステル製という3拍子揃った、70年代スイムショーツである。

 「よもやま話」Part1の第1話にも記したとおり、ビキニ水着も普段穿くパンティも、浅い程小さい程良いとされた時代であり、ビキニタイプとしてはこの形以外考えられない。箱の底には「TEIJIN」のロゴがあり、素材の化学繊維は帝人製だと分かる。定価は700円である。





 その後、80年代になってこの701は見かけなくなってしまった。置いてあったのかもしれないが、私の関心は他のショーツ(speedo等)に移ってしまっていたのである。 しかし、ここにCaspy(カスピ)がある。ご覧の通り同じ物である。何らかの理由でピーターパン・ブランドが使えなくなり、(株)岸田がブランドを変更して販売したとしか思えない。型番は「802」、価格も同じ700円だが、後に900円になった。バックは裏返してある。





 この間、見かけたピーターパンは、丸井で入手したこの「スーパーハイレッグショーツ」である。もうあのイラストはない。そしてこの形の変わり方はどうだろう。素材も綿とポリウレタンになり、これなら薄い水着にも使える。名実ともに80年代(正確にはその後半)のスイムショーツだ。価格は800円。

 ところで、掲示板などでも問題になる「スイムショーツとレオタードショーツの違い」だが、この製品の箱には、「水着に限らず、レオタードにも御使用下さい。」とある。確かに相当レッグの深いレオタードにも使えそうである。むしろ水に入ったら重くなりそうで、水着向きではないかも。





 そうこうするうちに90年代も後半。もうピーターパンに合うこともないと思っていたところ、新宿の高島屋で、あのイラストの入ったピーターパンを見かけた。ここから、ミューラーンの製品になる。

 まずNo.5502がセパレーツ(従来のビキニタイプ)、5503がハイレッグ(実際はTバック)である。不思議なことに、ハイレッグの方が高くて1000円。セパレーツが800円。
 形を見ると、Tバックの方はよくある品だが、ビキニの方がサイドの紐が太く、普通のビキニタイプとはやや異なる。素材には、「ポリノジャック」という聞きなれない素材が用いられている。やや、レオタード用を思わせる製品である。それとどうでもいいが、箱には両製品とも「SPORTS BRIEF」と表示されている。スイムショーツ、アンダーショーツ、スイムガードル位はともかく、ブリーフはやめてくれ、ブリーフは。

 ビキニタイプのみピーターパンのロゴが見えるので裏返してみた。
No.5502
No.5503





同時に「Peter PanU.S.A.」というブランドがミューラーンから発売されている。

 まずNo.5525。ワンピース用の白のスイムショーツ。縁取りが2重になっていて、いかにも着用時にはショーツラインが目立ちそうだ。無論、透け防止素材入り。箱の裏には、「白い水着に挑戦」と表示されている。つまり防透素材が使われている訳だ。

 No.5526はサイドの紐が細く、レッグも深く、防透けと、今日のビキニショーツになっている。「なんだ。なんのヘンテツもないじゃないか」と思う諸兄には、ヘンテツのないのがピーターパンなのだということを判かって欲しい。ビキニは常にそうだが、男性の着用には努力が必要だ。
No.5525
No.5526



ズキっちのワンポイント評論

 最初に紹介した「701」と最後の「5526」を見比べると20年の歳月が思われる。レッグの深さは一目瞭然だが、これは言うまでもなく、そのショーツの上に着る水着の形が変わったからに他ならない。でも、時代に合わせて形も素材も大きく変わっていても、「ピーターパン」ブランドは変わらない。
 雛鳥は、最初に見たものを親鳥と思うというが、相当数の女性に、この20年で「スイムショーツ=ピーターパン」のすり込みが行われていると思われる。でも水着と違い、ブランドの指名買いなどあるわけはないが、もう一方の雄(いや女性用だから雌か?)である「セシール」が旧態依然の商品を続けているのに比べ、製造会社の変更により、「ピーターパン」は、このとおり新しくなっている。こうなればもう一歩個性的な製品(言うまでもなくカラー物など)を望みたいところである。


 次回第8話は、ちょっとひねって「OEMショーツ」を取り上げます。三越ブランド、伊勢丹ブランドなどのスイムショーツが登場します。ご期待下さい。


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