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夜。 熊倉はレッスン場の屋上にいた。 ここからは新宿のビル群の夜景がよく見える。 熊倉はその夜景を見ながら、このレビューの原点を思い出していた。 熊倉の父母は小さな田舎町のバレエ教師だった。そのため、熊倉自身も4歳からバレエをやった。 両親のスタジオには町の多くの少女がバレエを習いに通っていた。 母が実際のレッスンをやり、父が雑務をやっていた。 父はモダンバレエの振り付け師だが、教えること自体はあまり好きではないようだった。年に1度の発表会のために生きているようなものだった。 多くの少女たちの中で哲雄と一番仲がよかったのは久実という少女だった。 抜けるようなきめ細かい白い肌を持つ美少女だった。 仲がいいといっても久実は哲雄よりも6つも上で姉のような存在だった。 久実は踊りがうまく、そのうえ、明るい性格のため、発表会では常にプリマだった。 両親が共働きの久実はよくレッスンのあと、哲雄と一緒に風呂に入り食事もして帰った。 哲雄が小学校4年になったある日、哲雄がレッスンをしているとスタジオに隣接している事務室で言い争う声が聞こえてきた。 「久実ちゃんが裸で踊るなんて。私は『いい』なんて言えませんよ!!」 哲雄の母の声だった。 「これは芸術なんだ。17歳の少女だから・・高校生の久実だからできることなんだ」 父が反論している。 「久実ちゃんのご両親になんていうの!!」 「両親は関係ありません。私、決めたんです。踊ります!!」 決然とした久実の声だった。 「勝手にしなさい!!」 母は言い切った。 スタジオの事務所の扉が開いて白い夏のセーラー服の久実が飛び出してきた。 哲雄と久実は目があった。久実は泣いていた。 「ごめん・・」 久実は哲雄を残してスタジオを飛び出した。 数日後の土曜日の午後だった。 哲雄は一人でレッスンをしていた。 母が行うレッスンは夕方からでそれまでの時間は哲雄が自由に使っていたのだ。 哲雄がバーレッスンをしているとドアが開いて制服の久実が入ってきた。 「こんにちわ、哲雄くん」 「久実さん」 久実にいつもの「元気な少女」の明るい雰囲気が欠けていた。 そのかわりに強い決意のようなものを感じる。 「1時間だけ、私にレッスン場を貸してくれない」 「いいですよ」 「発表会に備えてちょっと踊ってみたいの・・」 「ええ」 「哲雄くんだけに見てもらいたし・・」 「はい」 久実はまず、開いているスタジオの窓をすべて締め切った。そして、ドアにもカギをかけた。 ドアにカギをかけた久実は振り返って哲雄に言った。 「ここでの事は秘密にして・・絶対に・・・」 哲雄は久実の気迫に、うなずくしかなかった。 久実はテープをラジカセにセットした。そして、スタジオの隅に行った。 セミロングの髪を白いリボンで「シニョール」(おだんご)にした。 ハイソックスを脱ぎ、セーラー服の紺色のリボンを取った。 そして、セーラー服とスカートを脱ぎ下着姿となった。 「ストレッチだからあまり見ないでね」 久実は言った。そして、バレエシューズを穿いてブラとパンティだけでバーレッスンを始めた。 久実は白い清潔そうなパンティとやはり白いステッチ模様の入ったブラジャーをしていた。久実が中学生、哲雄が幼稚園くらいまで2人は一緒に風呂に入っていた。 その頃の久実の胸はかすかに膨らみ始めた程度だった。 しかし、今の久実の胸はブラを見事に「突き上げて」いる。小さなパンティに包まれた尻も大きい。 身体の線もはっきりと腰がくびれている。はっきりした線だった。 下着姿の久実はバーを使って脚を中心に十分なストレッチをしている。 「レオタード・・忘れちゃったの?」 哲雄は下着姿の久実に聞いた。 「ううん、違うの・・」 久実は答えた。しかし、それ以上は何も言わなかった。 哲雄もそれ以上は黙って、久実のストレッチを見ていた。 レオタードでするのと下着だけでするのとでは意味がまったく違っていた。 恥ずかしくないのかな・・哲雄は思った。しかし、それを口にはできなかった。 とにかく、久実は真剣にやっているのだから・・。 10分ほど、久実はストレッチをした。汗が身体を流れ始めていた。 「哲雄くん」 「はい」 「今度の発表会で、私、モダン(ダンス)の『特別な踊り』をやるの。それを今日ここで練習するの」 「うん」 「先生の創作のモダンで『スポーツボディ』っていう題がついているのよ。よく見ててね」 久実はそう言うと、フリップ(小道具)の新体操用のクラブと輪を対角に置いた。 そして、セーラー服などが畳まれて置かれているスタジオの端へ行き、穿いていたバレエシューズを脱いだ。 「・・・」 しばらく間があって久実は背中の金具をはずしてブラを取った。 久実は哲雄には背を向けていた。 立ち上がって、今度はパンティに手をかけた。 ふわりと白い小さな久実のパンティがスタジオの床に落ちた。 「え・・あっ!!」 哲雄はその言葉を口の中で言った。 バレリーナ久実は、ブラジャーとパンティをとって全裸になった。 オールヌードの久実がスタジオの中央までゆっくり歩いてきた。 久実の肌は白かった。 その裸身を曇りガラスを通して差し込む土曜午後の日差しがくっきりと映し出している。 久実は肩で息をしている。 息を整えているのだ。 子供の頃、何度か一緒に風呂に入ったことがあったが、身体はまったく変化していた。 見事な女のプロポーションなのだ。 豊かで形のいい若い女の乳房がかすかに震えている。 「ごめんね。哲雄くん、テープかけて・・」 哲雄は言われた通り、ラジカセのスイッチを入れた。 軽快な音楽が始まった。 その瞬間、一糸まとわない17歳の女の身体が動き始めた。 『特別な踊り』とはバレリーナを目指す少女、久実の全裸ダンスだったのだ。 哲雄の目の前で、久実の右脚が高々と上がった。 「あっ」 なにも穿いていない女の股間。 哲雄は、久実の股間にある自分と違った形の「性器」を目撃した。 久実はそこから2回側転して、新体操のクラブをとって頭上でゆっくりと回し始めた。 音楽に合わせ、正確な動きを刻む。 コスチュームのないオールヌードの分、久実は集中しているように見える。 柔軟さ、動きの美しさ、正確さ。 久実の素晴らしい部分、すべてが的確に表現されていく。 哲雄はその踊る姿を見て、いや、乳房の「ふるえ」を見て、初めてぼやけていた久実への感情がはっきりした。 久実は「異性」だったのだ。 自分が進むべき大人とは違う場所に久実はいるのだ。 妖精のような17歳の少女の踊りは終わった。 「踊っちゃった・・ハダカで・・真っ裸で・・」 四つん這いになって息を継ぎながら久実は言った。 「・・裸で・・踊ったのって・・初めて・・」 そこまで言って久実は立ち上がると、スタジオの端まで行って脱いだ衣服すべてを持って更衣室に駆け込んでいった。 哲雄はそれを見送るだけだった。 |
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その夜、哲雄は夢を見た。 昼間見た久実の踊りの夢だった。 わずか数分で終わったはずの久実のヌードダンスが延々と続いている夢だった。 それも久実はスタジオの床に足を着けずに宙で踊っているのだ。 踊りながら恐ろしい物が久実の身体に巻き付いている。 蛇だった。黒い蛇がスッ裸の久実の身体に巻き付いてる。 「ああっ」 次の瞬間、久実は清潔そうな白いセーラー服姿だった。しかし、蛇は容赦なく久実の身体を締め付ける。 その次の瞬間、久実は練習用のレオタード姿だった。同じように黒い蛇がまとわりついている。 哲雄は声が出ない。 蛇は鎌首をもたげた。狙いは久実の股間。 再び久実は全裸になった。蛇は確実に久実の・・17歳のバレエダンサーの股間に狙いを定めている。 「久実さん!!」 やっと声が出た。その瞬間、その蛇の頭は哲雄の・・自分の顔に変わったのだ。 「ぎゃあああ!!」 もう、遅かった。蛇はそのまま、脚を高々と上げた美しいバレリーナの身体に潜り込んだ。 蛇はピンと一本の棒になった。 「あああ」 そこで哲雄は目を覚ました。 「ゆ・・夢か・・」 哲雄は股間のあたりに違和感を感じた。 「ああっ!!」 哲雄の男のシンボルはこれまでにないほど腫れ上がり屹立していた。 さらに小水とは違う液体がパンツを汚していた。 明らかに男のシンボルの先端から吹き出した液体だった。 生まれて初めての夢精だった。 |
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哲雄は約束した通り、久実の踊りのことは誰にもいわなかった。 小さいなりに男の意地のようなものがあった。また、「夢精」の対象としてしまった後ろめたさもあった。 そして、発表会当日がやってきた。 久実の踊りは哲雄のちょうど前の演目だった。 久実はすでにパ・パ・デゥ(小作品)を3人のレッスン生と踊っており「着替え」をして哲雄の前に入る予定だった。 哲雄が舞台袖にいるとガウンを着けた久実が哲雄の前を通った。 「ありがとう、哲雄くん。私との約束を守ってくれて・・」 久実は髪をアップにし、舞台用のメークをした顔で哲雄に言った。 「はい」 哲雄は複雑な気持ちで答えた。 久実の前の演目が始まった。 5分ほどの小作品だ。 久実はガウンを脱いだ。 下には股間だけを隠す布とヒモだけでできたベージュの「締め込み」を着けている以外は裸だっだ。男たちが祭りでつける「締め込み」よりもはるかに小さく細かった。 久実が・・女子高校生がそんな「締め込み」下着=Tバックを着けているのが信じられなかった。 17歳・・成熟した女と子供の中間の身体・・。 レッスン場の光の中で見た女の肉体。 そこにいるのは久実と哲雄だけだった。 哲雄の後に踊る予定のダンサーはまだ来ていなかった。 久実はその「締め込み」下着にさかんに手をやって直している。 前布を引き伸ばしたり、尻の谷を通るヒモを直す。 そして、久実は裸でのストレッチを始めた。 脚が中心のストレッチだった。 哲雄に背を向けた久実の右脚が高く上がる。 次は左脚。 立ったままのストレッチの後は寝て、左右の脚を伸ばす。 前後、そして左右開脚。 動くたびに久実の乳房がかすかに揺れる。 久実は立ち上がって壁に手をおいた。 「は」 久実は柔軟で美しいアラベスクを決めた。 アラベスクをした時、股間が哲雄の方を向いた。 申し訳程度のTバックは股間の谷に飲み込まれそうになっている。 久実の出番が近づいてきた。 「哲雄くん」 久実から哲雄に話しかけてきた。 「先生にこの下着で踊ってもいいって言われたの。でも・・・」 しばらく間があった。 「私、ダンサーだから・・」 その言葉を小声で言った次の瞬間、久実は「最後の部分」を覆っている「締め込み」に手をかけた。 久実の股間と腰からベージュの布とヒモが下に降りた。 久実は布とヒモの「締め込み」の輪から右の脚を抜き、左も抜いた。 そして、はずした布きれ・・Tバックを久実はガウンの脇に放り投げた。 17歳のバレリーナがおしげもなく、美しく踊るために鍛えた身体すべてを晒した。 レッスン場で目撃した股間にはあるべき恥毛はなかった。 あの後、すっぱりと剃り落としていたのだ 哲雄の前に17歳のスッ裸になったバレリーナがいた。 久実は腕を下ろして、何もない胸を張った。 かすかだが久実は震えていた。豊かな乳房が揺れる。 「行ってくるね」 そう言って久実は哲雄の前から去り、舞台袖のカーテンまで進み出た。 舞台袖で両手を腰に添えて久実は呼吸を整えている。 久実の肌は舞台からやってくる光に妖しく映えていた。 哲雄は息を飲みそうだった。 美しかった。 全裸になって踊る決心をした久実。 もう、少しで前の演目は終わる。 一糸まとわず生まれたままの姿で舞台袖にいる久実。 大きく息を吸っていることが肩の動きでわかる。 前の演目は終わった。 「次は・・」 演目と久実が紹介される。 全裸の美しいバレリーナは光の方向へ飛び出していった。 哲雄にその後の記憶がなかった。 久実をあの日以来、スタジオでみかけなくなったことだけを覚えている。 一度だけ久実の父親がスタジオに来た。 どうして、久実の父親からそういう言葉が出たかは忘れたが、明確な久実の父の言葉が哲雄の記憶の中に残っていた。 「娘をヌードダンサーにするつもりでバレエを習わせたわけではありません!!」 夢精をしたあの日以来、夢に出てくるのは全裸でバレエを踊る妖精のような久実だった。 あの小さな「締め込み」を着けて踊る時もあった。 ほどなくあの「締め込み」は女性ダンサーたちがコスチュームの下に着用するショーツだということがわかった。 中学生の時にスタジオに「締め込み」=Tバックサポーターの忘れ物があった。 靴箱の上に「忘れ物」と書かれた段ボール箱にそれが入っていたのだ。 研究生の誰かが忘れたに違いなかった。 一週間たってもそれはそのままだった。 持ち主に見捨てられたようだった。 ある日、誰もいない時に哲雄はそれを手にとってみた。 それは予想以上に小さいものだった。 哲雄はそっとそれをポケットに入れた。 自分の部屋でベッドに寝て、それを観察しているうちに変な気分になってきた。 「ああっ」 久実のすっきりと落ち込む下腹部のラインを想像した。 その曲面をTバックのサポーターが覆う光景。 その久実の・・バレエダンサーの姿に、リビドーが激しく身体を突き上げる。 中学生となれば学校の性教育で自分が男としてどういう機能を持つのかは知識としてあったし、友人がもってくる成人向けのヌード雑誌を盗み見たことはあった。 しかし、感覚として性的衝動を自覚したのは初めてだった。 律動感が身体の中を駆け抜けた。 「ああ」 これほどなく勃起した幼い男根の先端から、一気に体液が吹き出して顔と腹に降り注いだ。 まだ、白濁はしていなかった。 最初は「おしっこ」かと思って慌てたがそれ以上に快感が勝っていた。 「ああ・・久実・・さん」 射精の後、弛緩しながら哲雄は久実に対する欲望をはっきり自覚した。 哲雄は年齢を重ね、いくつかのバレエコンクールで優勝し、世界的な踊り手になってゆく一方で久実を忘れられなかった。 久実のプロポーション。 久実の肌。 そして・・久実の深い『女の谷』。 高校生となり、初めてセックスした相手もバレエの研究生だった。 久実に似たタイプだったが、本当の意味の『欲望』を満たすことはなかった。 遠くにビルの明かりが見える。 今日、熊倉をスポンサーの食品会社の重役が訪ねた来た。 「君の前衛的芸術に協力はするし『金は出しても口は出さない』というのもウチの方針だ。しかし、会社として違法行為に荷担するわけにはいかない」 それがその重役の最初の言葉だった。 具体的には、18歳以下の少女たちが全裸で踊ることだった。 熊倉は沈黙するしかなかった。 同席していた広告代理店のスタッフが、すかさず用意していた新聞記事を出した。 「実は『オー・カルカッタ』が日本公演をした時にTバックで摘発されなかったことがあります。それがこの時の記事です」 『オー・カルカッタ』とはニューヨークでロングランを続けるキャスト全員が裸のミュージカルだ。80年代に日本公演をしたこともある。 「そこで今回は医療用のテープ・・まあ、絆創膏のようなものですけど・・で、股間を隠す三角の前バリを作ります。これを貼れば全裸とはいえません」 「う〜ん」 重役は唸った。 「それなら、熊倉くんが求める本来の舞踏の世界を崩さずに、違法の度合いも薄まると思います」 「もう一つ、もし、警察から摘発されるようなことがあっても、代理店の君たちレベルで収まるようにすることが条件だ」 「はい、それはもう。長いおつきあいを今後もさせていただきますので当然です」 代理店のスタッフは立って90度以上に腰を曲げた。 「よし、それならこれ以上、『妖精』に口は挟まない」 重役は言い切った。 「ぎりぎりの妥協なんだ。泣いてくださいよ。熊倉さん」 スポンサーが帰った後で代理店スタッフは言った。 熊倉は憮然とした表情だった。 確かにスタッフの機転がなければ、このレビュー自体、中止になる可能性があった。 スタッフに感謝すべきとも思う。 しかし、熊倉の理想から一歩退いたことも間違いなかった。 スポンサーと会った翌日、熊倉はダンサー全員を集めた。 「・・ということだ」 熊倉は顛末を説明した。 「で医療用のテープを『前』に貼ってくれ」 ダンサーたちは困惑していた。 「いまさら『貼ってくれ』って言われてもね」 意外なことに歓迎する声が少なかった。 「ウザイ・・」 なぜか、そんなことをいう娘さえいた。 |
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「よかった」 リハーサルを終えた熊倉はガウンを羽織った麻奈美たちに言った。 しかし、表情に明るさはなかった。 「シャワーを浴びて本番に備えてくれ」 そういうと熊倉は控え室に引き上げた。 「あんまり元気ないね、熊倉先生。私たちの踊りに不満なのかしら」 操が言った。 「そうじゃないと思うわ。なんとなくわかるけどね」 麻奈美は言った。 「熊倉先生は繊細な精密機械みたいな完全なステージを作りたかったのね。それが変な横ヤリが入ったからね・・」 「そうか」 操は言った。 「シャワー行こう」 麻奈美、亜沙美、操の3人はシャワー室に入った。 「ねえ、取って踊っちゃおうか」 「えっ!!」 シャワーを浴びながら麻奈美は2人に言った。 「う〜ん・・。でも・・」 「このステージは熊倉先生のものだけじゃなく、私たちのものでもあるのよ」 「・・・」 麻奈美はダンサーの中で一番、ステージに熱心なのは皆わかっていた。 しかし・・・。 いったんは「本当の全裸」で踊ることを覚悟したはずが、「シール」で股間を隠すことになってホッとしたのも事実だった。 「私は・・・取るわ」 麻奈美は静かに言った。 いよいよ開演が迫ってきた。 ステージ脇にはダンサー全員がガウン姿で集まっていた。 熊倉が来た。 「皆、最後までよくやってくれた。これまでのすべての努力をステージにぶつけてくれ」 「はい」 熊倉が立ち去ろうとした時だった。 「熊倉先生」 麻奈美が熊倉に声をかけた。 「なんだ」 次の瞬間、麻奈美はガウンをとった。 麻奈美は一糸まとわない17歳の身体を晒した。 「先生、私、きれいですか」 麻奈美は聞いた。 「ああっ、きれいだよ」 亜沙美もガウンを落とした。 「私はどうですか。先生?」 「ああ、きれいだ」 少女ダンサーたちは次々とガウンを落とした。 10人の少女が全裸で立っていた。 「先生、私たちきれいですか」 操が言った。 「ああっ、みんなきれいになった。本当に妖精のようだ」 「うれしい、先生。私たちはその言葉が聞きたかったんです。いままで色々とありがとうございます」 麻奈美が言った。 「君たち自身がそう望んでそうなったんだ。自分自身を誉めろ」 「はい」 そう言うと熊倉は舞台下に消えた。 「いこう」 麻奈美は裸の『妖精』たちに言った。 「開演10分前」 係がダンサーたちに言った。 「少しストレッチしようか」 麻奈美が亜沙美に言った。 「うん」 「右脚から上げるね」 麻奈美は右脚を上げた。そして亜沙美がそれを軽く押した。 麻奈美の股間には不自然な「絆創膏」が貼ってあった。 「やっぱり・・」 その絆創膏を見て麻奈美がつぶやいた。 「やっぱ・・私いらない。ダンサーだもの」 そういうと麻奈美は脚を上げたまま、その絆創膏をはがして、落とした。 「私、ダンサーだから。どんな姿だって踊ってみせるわ」 その姿を見た亜沙美も股間から絆創膏をはがした。 「私もダンサーのつもりだけど」 「あっ、私も・・」 操も同じようにした。 「私もね」 次々と絆創膏がはがされた。 麻奈美も、亜沙美も、操も心の底では羞恥心に苛まれている。 しかし、ダンサーとしての存在と誇りがそれを上回っていた。 「開演5分前」 照明が落とされた。 係は暗くて少女たちの「異変」に気づいていない。 娘たちは闇の中で「すべてを晒した姿」で立っていた。 「ふうっ」 麻奈美の胸が深呼吸でかすかに揺れた。 麻奈美は自分で自分の乳首を触ってみた。 勃起している。 エクスタシーという言葉が浮かんだ。 音楽が鳴った。 幕が開く。照明で舞台が明るくなった。 「いくよ!!」 10人の娘・・身体に何もつけていない「真っ裸」の娘たちが光の中に飛び出した。 そして、その肉体で生命の力のあらん限りを尽くして踊り始めた。 |
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数ヶ月後、ニューヨークのダンススタジオ。 レオタード姿の亜沙美が踊っていた。 「Phone call to you」 黒人の女性が踊っている亜沙美に声をかけた。 「ハロー」 スタジオ隣にあるブースで亜沙美は電話に出た。 「元気そうじゃん」 電話の相手は麻奈美だった。 「わあ、麻奈美さん。元気してた。いまどこから電話かけてるの?」 「パリよ」 「そう」 電話の声はすごく明るそうだった。 「今日ね。熊倉ダンスカンパニーの新作が決まってね。今、記者会見が終わったところ」 「そう」 「会見で『妖精』の話が出てね。それで亜沙美に電話かけてみようかなって思ったのよ。こっちでは『妖精』は大変な話題よ。芸術性の高さでね。熊倉先生が魂を込めた力作っていう評判なのよ」 「日本じゃ、児童ポルノ法で話題になったけどね」 「17歳って外国じゃあ大人なのよね・・」 隣のスタジオではアマチュアのダンスクラスが踊り始めた。 「ニューヨークって、自由なのよね。なんか」 「亜沙美には合ってる感じがする。日本みたいな小さな世界で生きてもしょうがないもの。裸になるっていう表現の自由さえない世界では本当の力を試せないわよ」 「私もそう思う」 電話を置いた亜沙美はアマチュアのダンスクラスの音楽が聞こえる中、誰もいないダンススタジオの中央に立った。 そして、着ていたレオタードを脱いだ。 レオタードの下は生身の・・生まれたままの身体だった。 天井の高いダンススタジオには隣のビル群のガラスから反射して入る太陽の光が溢れていた。 隣のスタジオから聞こえる音楽に乗って亜沙美は踊り始める。 再び『妖精』になる決意をして・・・。 (了) |