『妖精』
〜ヌードレビュー2000〜



 プロローグ

若い女たちが舞台の袖にいた。全員が白いガウンを着用している。
「では最終リハ行きます」
声がかかった。
若い女・・いや、少女たちと言っていい一団は白いガウンを取った。
その下には衣服は一切着けていなかった。
スッ裸の若い女性の肉体があった。
「これ貼るの」
一人の少女が別の一人に聞いた。
少女たちは手に小さな絆創膏のようなものを持っていた。
「やっぱり貼っておいた方がいいんじゃない」
「そうね」
少女は絆創膏を陰毛がまったくない股間に持っていって貼った。
辛うじて「絆創膏」だけが陰部を隠している。
「各自ポジションへ」
緞帳が下がっているステージに少女たちは散った。
ポジションに着くと、それぞれが「ストレッチ」を始めた。
脚を高く上げてバランスする娘、床で前後開脚する娘。
一人だけ開脚側転をする娘がいる。
全員が裸同然・・いや股間に「絆創膏」だけを貼った姿でストレッチをしているのだ。
「よし、いくぞ」
声がして舞台の照明が落とされた。
全員がそれぞれ決められた位置と形で用意した。
時間が静止したようだった。音もなかった。
荘厳なクラシック音楽が鳴り始めた。
緞帳が上がり、投げかけられた照明が舞台に差し込む。
「ワン、ツー・・」
曲がアップテンポのジャズに変わり全員が一斉に踊り始めた。
見事で機敏な動作。同時にまったく同じ動きで始まり、別々の動きになり、再び統一される。舞台全体が一つの生き物のように見える。
誰も入っていない客席で一人の男が、厳しい視線を舞台に投げかけていた。
生身の・・まっ裸の少女たちの踊りは正確に続いていた。




第1部、オーディション

2ヶ月前、東京
「世界へのステップを!! ダンサー募集」
そのパンフレットの題名はそうなっていた。
「世界的バレエダンサー、熊倉哲男氏がプロデュースする夢の一幕・・。そのためのダンサーを募集しています。女性で年齢は16歳から18歳まで」
とあった。
そして赤いアンダーラインで「踊りの種類は不問、資格も問いません。ただしプロを目指し、どんな格好ででも踊れる人」とあった。
「これやってみようか」
渋谷のレオタードショップで、そのパンフレットを取った制服の女子高校生2人組の一人が言った。
「もし、選ばれればロンドンに連れてってくれるかも・・」
「熊倉哲男ってつい最近自前のバレエ団作ったばかりだからプリマのチャンスがあるかも・・」
「でも、どんな格好でも踊れる人ってどんな意味」
「ワカンナイ」

同じ東京渋谷の広告代理店
「どのくらい集まった」と担当者
「そうですね、100人くらいいますかね」
もう一人の女性担当者が答えた。
「残るのはどのくらいかな」
「事情を説明したら10人になるかも・・」
「いいところだね」

数日後、東京、世田谷の小さな劇場
若い女たち100人以上が集まっている。
手には着替え用のバッグを持っている。
女子高校生が中心のせいか制服姿も多かった。
「では、客席の方に座ってください。プロデューサーの熊倉哲男からオーディションについての説明があります」
担当者が舞台の上からマイクで説明した。
熊倉が舞台に現れた。
長い髪を後ろで結んだ甘いマスク。
いかにもダンサーというしなやかな身体。
メッシュのシャツに黒い革のズボンを穿いていた。
「美しき野武士」の異名があるバレエダンサーだった。
その姿に客席からは「キャー」という声もとんだ。
しかし、熊倉はニコリともしなかった。
「ごくろうさまです。まず、オーディションを始まる前に理解してもらいたいことがあります」
熊倉は切り出した。
「今回の公演は『くるみ割り人形』や『白鳥の湖』のようなクラシックではありません。創作のモダン(ダンス)を中心としたレビューです」
熊倉は客席を見回した。
「一つの狙いは、私のやっているコーヒーのCMのスポンサー企業から『挑戦的で官能的な舞踏』をやってほしいというリクエストに応えること。もう一つは私が始めたバレエ団に参加できるプロのダンサーを探すことです」
娘たちは目を輝かせた。ダンサーとして大きく飛躍するチャンスが目の前にあるのだ。
「しかし、プロにはプロとしてやっていく覚悟と技量が必要です。オーディションを含めて、この公演でそれを試します」
娘たちが熊倉を見つめた。
「まず『どんな格好でも踊れる人』という条件について説明します。今回の公演では出演者は全員がヌード・・つまり全裸で踊ってもらう予定です」
熊倉は淡々と言った。
「ええっ!!」
会場からは驚きの声が上がった。
「プロなら・・いや、プロになろうとする者ならヌードくらいで驚いていてはどうしょうもない。いままでの鍛錬で見せられる身体を作ってきたと思う。その自信がないものは審査に値しない」
熊倉は厳しい言葉で言い切った。
会場はざわついた。中にはもう席を立つものもいた。
「ど・・どうしよう、亜沙美」
会場の中で制服の2人の娘が話していた。
「裸で踊るなんて聞いてないよ」
「私、やってみる」
三枝亜沙美はきっぱりそう言った。
「オーディションの参加希望者は30分後にレオタードに着替え、この劇場地下の練習場へ集合。ストレッチはその間に済ませるように。すぐにオーディションを始める」
熊倉は言いはなった。

地下の練習場は広かった。確かに100人でもオーディションが可能だろう。しかし、参加したのは30人までいかなかった。
みんなは女子高校生のようだった。
多くの娘たちが制服姿だからだ。
レオタード姿になった亜沙美はストレッチをしながら、これからどうなるのか不安だった。
亜沙美はバレエの経験はあったものの器械体操の選手だ。
将来の決まり切った退屈な日常から離れられるかも・・・。
それが応募の動機だった。
確かに友だちが言ったように「裸になって踊る」ことは聞いていない。
しかし、それなりにエキサイトな日々が待っているようにも思えて残ったのだ。
亜沙美の横で、端正な顔だちの大人びた女性が開脚のストレッチをしていた。
『きれいな人』
そう思った瞬間、熊倉とそのスタッフが練習場に入ってきた。
「ほう、予想以上に残ったな」
熊倉は言った。
「さあて、これからが本番だぞ。まず、身体の線が見えるようにレオタードになって立ってもらおうか」
30人・・いや正確には27人だった。
「そこの赤いの・・そうそう、あなた」
熊倉は赤いレオタードをつけた女性を指差した。
「身長は」
「170です」
「体重は45キロ・・」
「そう。ここはダイエット教室ではない。そんなバランスの悪い身体はいらない。お帰りください」
赤いレオタードの娘は、くやしそうにその場を去った。
「そのタテストラップのお嬢さん。あなた、バストいくつ」
その娘の乳房はレオタードを突き上げて目立っていた。
「93です」
「そんなデカ乳で踊れません。お帰りください」
熊倉はその場で2人を落とした。

「それでは番号を付けてください」
スタッフが全員に通し番号のゼッケンと安全ピンを渡した。
1番から25番まで。亜沙美は18番だった。
「では私がワンルーティンを説明しながら踊る。それを3ルーティン踊るように」
熊倉はテープの曲に合わせて簡単な踊りをした。
ターンにキックといった基本的なものだった。
全員での群舞だった。
「ストップ・・ストップ!!」
熊倉は2ルーティン目の途中であわてて音楽と止めさせた。
「おい、3番、4番。君たちは本当にダンサーなのか。このオーディションで合格する気があるのか」
たしかに3番と4番の少女は全員から遅れていた。
「いいえ、違います」
3番が応えた。
「私たち、熊倉さんの大ファンで・・・」
そこまでいいかけて熊倉が怒鳴った。
「帰れ。邪魔だ!!」
熊倉の剣幕に会場はしばらく沈黙が支配した。
「残りの者は、もう一度2度目のルーティンから」
音楽が始まった。
3度目のルーティンが終わった。
「よし、2番、17番、20番・・それから24番。以上の者は前に出ろ」
4人が前に出た。
「君たちは残念だがダンスの才能はない。プロとしてやっていくのは厳しいレベルだ。交通費を受け取って帰宅してくれ。ご苦労さま」
4人はしかたなく練習室を出ていった。
「このオーディション、本気みたいね」
亜沙美の隣の16番の少女が言った。
「うん」
亜沙美は言った。
「残りはこちらが支給するコスチュームに着替えて集合」
熊倉はスタッフから書類を受け取って別室へ向かった。
「ではこちらでコスチュームを支給します。サイズはMとSしかありませんが悪しからず」
女性スタッフが言った。
「ゼッケンはそのまま使用しますが『布が小さい』ので付けるときには各自、工夫を。それから着替えは時間を節約するためにこの場お願いします。また、トイレはこの時間を使ってください。全員が着替えを済ませ用意が終わったら、すぐに始めます」
「きゃ、何これ」
一人の少女が声を上げた。
「ひ・・ヒモビキニの水着じゃない」
亜沙美は手渡された袋を開いてみた。
たしかに白いビキニの上下だった。
「これ、着けるの」
同じように16番の娘が声を上げた。
「そうです。素肌につけるように」
スタッフの女性は事務的に言った。
「裸の筋肉がよく見えるように、このコスチュームを着けるのです」
理由を事務的に伝えた。
レオタードとタイツを脱いで白いビキニに着替えている時に16番の娘が声をかけてきた。
「私、東都女子体育大付属の東埜操って言うんだ。よろしくね」
「ええっ。私、三枝亜沙美・・東和女学院なの」
「へっ、東和女学院ってお嬢様学校の進学校じゃないの」
操はびっくりした感じだった。
「私、体操しか取り柄がないから」
亜沙美は操の名前をどこかで聞いたことがあった。
「あっ、もしかしたら新体操の東埜操さん」
「あっ、知っててくれた」
「だって、いつも全国大会で上位だもの」
確かに操の名前は新体操の大会を報道するどんな新聞にも載っていた。
「でも、五輪に出れるのは2人か1人。万年10位入賞選手じゃあね。ここで流れを変えちゃおうと思ったのよ」
「ふうん」
2人は着替えながら話した。
「着替えを終わったか」
熊倉哲男が再び練習室へ戻ってきた。
全員が白いヒモビキニにダンスシューズだった。
「なかなか壮観だな」
「こんなオーディションはナンセンスです」
水着になった1番の娘が熊倉に異議を申し立てた。
「ストリップの舞台を作るのなら、ストリッパーをオーディションすればいいことです。バレエやダンスなど芸術を志す者を対象にすべきではないと思います」
亜沙美がきれいな人だと思った女性だった。
熊倉はスタッフを呼んで1番の経歴用紙を見た。
「東都女子体育大付属高校の立川麻奈美、18歳か」
「はい」
「質問はオーディションが終わるまでは受け付けないつもりだったが、この舞台の意義をまだわかっていない人もいるかもしれないので、その質問に答える」
熊倉は言った
「立川くん。君の好きなバレエダンサーは誰だ」
「シルヴィ・ギエムです」
「パリ・オペラ座のプリマ。ロンドン・ロイヤルバレエ団に引き抜かれた時にフランスの新聞が一面で『国家的損失だ』と嘆いたという世界的なバレリーナだな」
「はい」
「では、質問に答える。今回の舞台は途中から洋服を脱ぐストリップではない。始めから何も着けない。コスチューム、小道具は一切なし。初めから終わりまでダンサーは全裸だ」
全裸という言葉に亜沙美はもう一度、ドキリとした。肌を晒さなくていけない現実をもう一度認識した。
「ストリップのように着ているものを脱ぐことで情感も欲情も一切誘わない。あるのはダンサーの肉体のみ。そのダンサーも一流の踊りで誘う。わかったか」
熊倉は一気にそこまでしゃべった。
「それから、ストリップが芸術でなく、バレエが芸術だと誰が決めた。あるのは美しく踊り、人の心を動かせるかだ」
熊倉は断言した。
会場を沈黙が包んだ。
「それができるダンサーを探すのがこのオーディションであり、舞台へ向けてのレッスンだ」
確かに熊倉のいう通りだった。
でも自分ができるのか、娘たちは同じことを考えていた。
「もう一つ、立川くんのために付け加えておこう。超一流のギエムは多くの舞台を全裸でこなしている。誰も汚らしいとは言わない。そうなる自信のない者はこの場で下りろ」
続けて熊倉は言った。
「立川くんは下りないのか」
「いいえ」
麻奈美はきっぱり言った。
「よし、始める」

第2ラウンドは熊倉の複雑な動きをすぐに自分の動きとして再現するものだった。
「よし、3人づつやれ」
3人一組でセンターで踊る。
麻奈美の動きは抜群だった。
女の柔らかさに加えてスピード感があった。
「かっこいいね」
亜沙美は操に言った。
「彼女、ダンス部の中でも1、2の実力があるって言われているのよ」
操が答えた。
「そこ、静かに!!」
熊倉が指摘した。
踊りが一巡すると再び、熊倉が踊る。それを再現する。
踊りはさらに複雑になっている。
都合5回も踊らされた。
亜沙美も操も初めは水着が恥ずかしかった。
素肌を大きく露出した状態で踊ったことなどなかった。
しかし、そんなことは言ってられなかった。
熊倉の踊りを覚え、それを再現するのに必死だった。

いつの間か汗びっしょりになった。
もともとコスチュームの白い水着にはパットがない。
恥ずかしさで乳首が立ってくるのがわかった。
このままでは乳首の先が擦れてしまう。

「よし、終わり!!」
熊倉が言った。亜沙美たちは戻ってタオルをとった。
「よし、番号を呼ぶ。呼ばれた者は一歩前へ」
緊張が走る
「1番、3番・・・」
亜沙美も操も緊張した。
「16番」
「私だ」
操は一歩前に出た。
「18番」
亜沙美も呼ばれて一歩前に出た。
「全員で12人のはずだ」
確かに一歩前に出ているのは12人だった。
「以上の者が最終審査対象者だ。残りの者は残念だが、今回の舞台では採用できない。ご苦労さま」
「ヤッタア!!」
誰かが小さく叫んだ。
「最終審査対象者はそのまま、ステージへ移動。すぐに始める」


 ★麻奈美
「よし、一列に並べ。最終審査だ。厳しいぞ」
熊倉はステージに最終審査対象者の12人の娘を並べた。
全員が白いビキニだった。
「水着とシューズを取れ」
「は・・」
「聞こえなかったか。水着をはずして全裸になれ」
熊倉は当然のように言った。
裸で踊ることが宣告されているにもかかわらず、娘たちは躊躇した。
そんな中で麻奈美だけがブラを取り、シューズを脱いだ。
もちろん、顔は赤らめていた。
「ショーツはどうした」
麻奈美は恥ずかしさのせいで少し震えている。
少し間があって、麻奈美はショーツを降ろした。
股間には多くはない陰毛があった。
麻奈美は右手で胸を左手で股間を隠した。
「他の者はどうしたんだ」
他の娘たちはまだまじもじしている。
「まあ、いい。一人一人審査するからな。審査開始までに脱がない者は棄権とみなすぞ」
そう言うと熊倉は落ちている麻奈美が着けていたビキニのブラとショーツ、そしてシューズを取り上げた。
「これはもういらないな」
熊倉はそれを客席の方に投げた。
「あっ」
全裸の麻奈美は言った。
「人前でスッ裸になるのは初めてか」
「は・・はい」
さすがの麻奈美もこの状態に立ち往生している。
「お前には柔軟性を見せてもらおう」
「は・・はい」
麻奈美は羞恥心で顔を赤らめている。
「さっきも言ったとおり、ダンサーとして堂々とやってみろ」
「はい」
麻奈美は股間から手をはずした。
「やっと覚悟が出来たようだな」
スッ裸になった麻奈美は顔を赤らめていた。
「まあ、グランバットマをしてもらおうか」
グランバットマとはチアガールのハイキックのようなものだ。
ただ、ゆっくりやる。
そういうと熊倉はステージを飛び降りた。
「ここで見ているからやってみろ」
「な・・なんなの!!」
操が言った。
そんな位置からでは麻奈美の「クレヴァス」は丸見えになる。
脚を上げれば見えてしまうだろう。
「客はこの位置から見ているんだぞ」
熊倉はさらに挑発した。
「マンコが見えるくらいどうした!! ダンサーになるんだろう。お前は!!」
その言葉に後押しされるように麻奈美はゆっくりと右脚を上げた。
「ほう、やればできるじゃないか」
そう言うと熊倉は持っていた麻奈美の経歴書に目を落とした。
「お前はなんでこのステージに参加したいと思った?。おっと脚は上げたままキープしろ。それで答えろ」
麻奈美は脚を上げたままになった。
「私は自分を変えたかったんです」
「ほう、どう」
「それはこのステージへの参加を通して考えたいの。だから・・」
「だから・・・」
「全力で・・自分の存在の全てをかけて踊ります」
「そうか、わかった。脚をおろせ」
麻奈美は脚を降ろした。
「曲をかける。ジャズだ。自由に踊って見ろ」
「はい」
ステージに軽快なジャズ音楽が流れた。
麻奈美はステップを踏み始めた。
「す・・すごい」
亜沙美は思った。
麻奈美の身体は宙を舞っているように見える。
ダンサーとして女として最高の動きだろう。
一糸まとわないダンサーが踊る。音に乗って正確に動く。
熊倉が手を上げると音が止まった。
麻奈美は踊りを止めた。
息は上がっていないが、全身を汗が流れている。
「スッ裸で踊れたな」
熊倉が言った。
「よし、時間がない。次、行くぞ。全員、水着を取って待っていろ」
全員が麻奈美の気合いに押された形でブラとショーツに手をかけた。
12人全員が全裸になった。
全員にまだ恥毛があった。


 ★操
「16番、東埜操・・。お前は新体操出身か」
操の番が来た。全裸の新体操選手がかすかに震えている。
「はい」
「最初に聞く。お前は本当にこのステージに立ちたいのか」
「はい」
「なぜだ」
「1番と同じように自分を変えたいから・・」
「そうか、では聞く。お前は男の肌を知っているのか」
「・・・」
唐突な質問に答えが出ない。
「同じ質問をしよう。お前は男のオチンチンを自分の身体に受け入れたことがあるのか」
「な・・なんですって。なんでそんなことを答えなくちゃいけないのよ!!」
操は怒った。
「答えはどうした」
操は真っ赤になっている。赤らめる理由は怒りばかりではないようだった。
「そんなことで取り乱すから、お前は新体操で万年10位以内の選手なんだ」
「な・・・」
操は図星を突かれて言葉が出なかった。
「お前の得意なルーティンをやってもらおうか。経歴書類によるとリボンが得意だそうだな。それをやれ、ナマ乳丸出しの裸でな」
全員がステージの左右に広がった。
亜沙美は操の経歴を熊倉がよく調べてあると気づいた。
操はリボンをバックから取ってきた。得意技を披露するために用意するように言われたものだった。
しかし、いくら得意でも全裸でリボンの演技をしたことはなかった。
「言っておくがここからはお前のオマンコの穴もケツの穴も見える。そんなことを気にしていては今回のステージに参加する資格はないぞ」
熊倉は客席から見ている。
「は!!」
操は動き始めた。 最初は動きがぎこちなかったが、そのうち、調子が上がりリズムが出てきた。
「はっ」
集中しているせいか、リボンを落とすようなミスはまったくない。
手先、足先まで神経が行き届いており、美しい動きをしている。
「かっこいい」
亜沙美は思わず手拍子をし始めた。
それにつられたのか、皆が手拍子を始めている。
リボンは生き物のように裸の操の身体を動いた。
「はっ」
そして、最後にはリボンが操の全裸の肌にまとわりついて止まった。見事すぎるフィニッシュだった。
見ていた者たちから拍手が出た。
「かっこいい!!。すごくよかった」
亜沙美は言った。
「ありがとう」
操はうれしそうだった。
しかし、どこか目に曇りがあった。不安だった。
その目を熊倉に向けた。
熊倉は無表情だった。
「これまでやってきた新体操の演技の中で一番よかったんじゃないか」
そういうと書類に目を落とした。
「次、18番、三枝亜沙美・・」


 ★亜沙美
「ほう、体操選手、それも東和女学院・・お嬢様の進学校だな。なぜ、このオーディションを受けようと思った」
「自分の人生を変えたかったからです」
亜沙美はきっぱりと言った。
「お嬢様の進学校の女子高校生が裸になれば、何をいわれるかわからんぞ。このレッテル張りの国では・・」
「構いません」
「そうか、覚悟はわかった。じゃあ、実力を見せてもらおう。そうだな。お前にはバック転連続6回やってもらおうか」
「は・・はい」
「できるの。そんなに」
操が心配して声をかけた。
連続6回のバック転はそうそうできるものではない。まして、堅いステージの床ではケガをする可能性さえある。
「平気よ」
亜沙美はステージの端まで行った。
両手を腰にあて少し脚を開いて亜沙美は集中していた。
大技を決めるときはいつもこうしていた。
しかし、違うのは一切の布を肌に着けていないことだった。
一瞬、今の自分の姿を想像した。
レオタードなしのスッ裸でバック転することへの羞恥心がよぎったが、すぐにその考えを振り捨てた。そんなことを気にすればケガをする。集中しなくては・・。
「ふう」
全裸の腹がかすかに波打つ。
豊かな乳房がかすかに震える。
呼吸を整えた。
「は」
1回目のバック転は全身の筋肉の力で回った。
2回目は反動をつける。
「3回・・」
亜沙美は心の中で回数を数える。
4回、5回。
6回目は止めなくてはいけない。
「はっ!!」
亜沙美は見事に全身の力で自分の身体の回転を止めた。
「かっこいい!!」
操はそう言ってくれた。
拍手が出た。
「ダンスよりサーカスの方がいいんじゃないのか」
熊倉は相変わらず無表情で言った。
「よし、次・・」
亜沙美の審査は終わった。
「ああっ」
緊張が解けて汗が全身から吹き出した。
その汗は全裸の亜沙美の身体を流れ落ちる。

熊倉は全員の審査を終えた。
「よし、合格者を発表する」
全員が再び水着を着けていた。
「6番、19番前へ」
「はい」
2人が前へ出た。
全員がどきどきした。
「残念だが、2人が不合格だ。君たちはダンサーとしての才能は確実にある。しかし、今回のステージでは演ずる場面がない。また、一緒に仕事をする機会があればいいと思っている」
熊倉は丁寧だった。
己の肌をすべて晒して挑戦した女子高校生2人がステージを降りた。
「残りは合格」
「やったあ!!」
「やったのね!!」
声が上がった。
「これは第1歩だ。これからが本番だ。わかったな」
「はい!!」
皆は裸のままでいることも忘れて声を揃えた。

(つづく)


目次