『妖精』
〜ヌードレビュー2000〜



第3部、プロモーション

 ★撮影
レッスンが始まって一週間がすぎた日のことだった。
「明日、プロモーション用の写真撮影をやる」
熊倉がレッスン前に言った。
「プロモーション?」
「写真撮影?」
ダンサーたちは怪訝な顔をした。
たしかにいままでレッスンに集中していて、そんなことにまで気が回らない。というより、初めてのことでダンサーがそんなことまでやるとは気づかなかった。
「麻奈美と亜沙美。明日、マネージャーと一緒に渋谷のスタジオへ行け」

渋谷のスタジオではカメラマンを中心にコピーライターなどが待っていた。
「まず、最初に身体を見せて」
中年のカメラマンが言った。
「レオタードでいいですか」
亜沙美は聞いた。
「だめだ。全裸舞踏のPRなんだ。下着ぐらいにはなれよ」
カメラマンは言った。
確かにそうだった。
「ぐずぐず言わないで身体を見せろ」
2人は仕方なく着ていた衣服をスカートを脱ぎ下着姿になった。
「一応、見せられる身体じゃねえか」
カメラマンが言った。
「ダンサーは見られてナンボ、踊ってナンボの商売だってこと、わかっているんだろうな」
「・・・」
カメラマンは言った。
「はい、後ろ向いて」
カメラマンは指示した。2人は後ろ向きになった。
「なかなかだね。さすがに熊倉が選んだダンサーだけある」
「はあ」
2人は初めて誉められて答えた。
「ダンサーは裸の背中が美しいほどいいダンサーなんだ」
「はい」
「よし、ストレッチして準備しろ。少し踊ってもらうぞ」
「はい」
2人はややエンジンがかかってきた。
「照明は真上から。下に陰を作るぞ」
カメラマンは助手に注文を始めた。
2人は下着のまま、ストレッチを始めた。
「おいおい、ヌードなんだぞ。下着の線が浮いたらおかしんだ。ストレッチから全部脱げ」
「ええっ」
亜沙美は思わず声を出した。
「ヘアヌード撮影の時はモデルは1週間はパンツを穿かないで生活するんだ。1日ぐらいなんだ」
カメラマンは神経質そうに言った。
2人は仕方なくブラとパンティを脱いで全裸となった。カメラマン以外にもスタッフの多くが男性だったが気にしている様子はなく、それぞれが淡々と仕事をこなしていた。
そんな中でスッ裸の女子高校生2人が手足を伸ばすストレッチをしていた。
「ス・・ストレッチでオマンコ見えちゃうね」
麻奈美が亜沙美にささやいた。
近頃、ダンサーたちの間では平気で女性器の蔑称・・つまり「オマンコ」を会話の中に使っていた。
ストレッチが終わる頃を見計らって、カメラマンが言った。
「少し身体に赤みが欲しいので1曲踊れ」
「はい」
2人は用意したテープをやや大型のラジカセにかけて、写真撮影用のステージで踊り始めた。
2人は曲にのって軽やかに踊った。
「よし、一人来い。そうだな、あんた」
カメラマンは亜沙美を指名した。
「ひとつ、言っておくが顔は写さない。ダンサーの身体がテーマだからな」
2人はその宣言になぜかホッとした。
「よし、肋木(ろくぼく)を移動させろ」
「はい」
助手たちが体操などで使う「肋木」を亜沙美の左右に移動させた。
「ライトは上」
カメラマンはてきぱきと指示を出す。
「肋木」は遠近法をうまく表現できるように亜沙美の前に向かって狭くなっている。
「よし、こっちに背を向けて思い切り開脚してみろ。尻だけ少し浮かせろ」
「手はどこに置くんですか」
亜沙美は質問した。
「ひざに置け」
「はい」
亜沙美は大きく開脚して肋木に片足をかけた。
「よし、ポラロイドでテストする」
カメラマンが言った。
亜沙美は肋木に脚をかけて言われた通りに開脚した。

スタジオは少し暗くなり光が亜沙美の上から降り注ぐ。
数枚シャッターが押されてようだった。
「よし、開脚をいったん解け」
カメラマンは命じた。
「す・・」
テスト撮影のポラロイド写真を見て麻奈美が「すごい」という言葉を言うつもりが出なかった。
亜沙美もそのポラロイド写真を見た。
「これが私・・・」
写真は上からの光だけだった。
17歳の少女が全裸で開脚している。
普通の開脚ではない。完全な左右対称な開脚。
それもスッパダカ・・・
その少女・・亜沙美の体操選手として鍛え抜かれた筋肉が構成する肉体が浮き彫りされている。
ちょっと見ると男に見える肉体だが、尻とクビレとまとめてアップにした髪型で女とわかる。
「きれい。それにかっこいい」
脇から麻奈美が言った。
「世の中に氾濫しているヌード写真はただ脱ぐだけだ。それで安っぽい欲情を誘っている。しかし、今回は違うぞ」
カメラマンは独り言のように言った。
「見ただけで男の欲情をいきなり引き出すような『完全なヌード』写真を撮ってやるよ」


 ★被写体
しかし、亜沙美に対しての撮影は比較的短時間に終わった。
カメラマンは「う〜ん」と言ったきりだった。
明らかに作品に不満があるようだった。
亜沙美も正直困った。絵コンテ通りやったのだから不満はないはずだ。
「よし、次」
カメラマンが次に指名したのは麻奈美だった。
アートディレクターが絵コンテを出してきてカメラマンと話し始めた。
「こんな絵コンテを表現できる娘かな」
「できると思うよ」
今度はカメラマンの方が積極的だった。
「いいでしょう」
「彼女、名前は」
「麻奈美です」
「スタイリストさんから『衣装』をもらって」
「はい」
「衣装?」
麻奈美と亜沙美は顔を見合わせた。
「最初は衣装を付けて、次は衣装なしでやる」
カメラマンはそれだけいうと、すぐにスタッフへの指示を飛ばし始めた。
しばらくして「更衣室」に行った麻奈美が戻ってきた。
「ジャン」
麻奈美の「衣装」とは極小の布とヒモでできたTストラップだった。
「ひえ、『プチッティ』より小さいじゃないの」
亜沙美が言った。
「この衣装いくつかあるんだって」
そう言って手に持った何枚かのボトムをみせた。
黒いものから白いもの、そして「テグス」のようなヒモのものまであった。
「よし、始めるぞ。ステージに立って」
カメラマンが指示した。
麻奈美は言われた通り、カメラのあるステージに立った。
「ライト上から。カウンター側ストロボに接続されているな」
「はい」
「ではポラでテストを」
カメラマンはシャッターレリーズを握った。
再び、普通の照明が消され上からだけのライトになった。
「よし、踊ってみろ」
カメラマンは指示した。
マネージャーがテープをかけた。
映画「フラッシュダンス」の中の「パンプキング・アイアン」だった。
もともとジャズダンス出身の麻奈美だけに、身体のキレは抜群だった。
「かっこいい」
亜沙美は小声で言った。
普通の照明ではない、上からだけの照明だと筋肉の動きが引き立つ。
裸の女子高校生が踊っている。
乳房がフルフルと震え、尻がわなないている。
しかし、確かに「17歳の女が裸で踊る」といういやらしさを麻奈美は超越しつつあった。
「よし、踊りをやめて、カメラの正面に立て」
「はあ、はあ、はあ・・・」
麻奈美は息を切らしていた。
思い切り手抜きなしで踊っていた。
「汗はいらないが、潤った肌が欲しい」
カメラマンはスタイリストに向かって叫んでいた。
「はい」
スタイリストの女性が麻奈美の背中をタオルで拭いている。
「よし、両手を腰におけ」
「はあ、はあ・・」
麻奈美は腰に手を添えた。
「よし、脚を軽く開け」
両脚が軽く開かれた。
「よし、よし」
シャッターがリズミカルに切られる。
潤った17歳の女子高校生の肌。その美しく盛り上がった尻を通る極細の「ヒモのフンドシ」。
鈍くY字になっている「フンドシ」は肌の美しいアクセントとなっている。
「よし、よし。ちょっと後ろに反り返って・・」
麻奈美は軽く反りかえった。
あっと言う間にワンロール終わった。
「下着のヒモがねじれている。直して」
自分で直そうとする麻奈美にスタイリストが言った。
「これは私の仕事よ」
「よしOK」
2ロール目もあっと言う間だった。
3ロール目のフィルムを装填しながらカメラマンが言った。
「よし、「フンドシ」を脱げ」
カメラマンは有無を言わせない勢いがあった。
「は・・はい」
麻奈美は答えた。
そして、麻奈美は穿いていたTバック・・いや「ヒモフンドシ」を右脚から脱いだ。
「麻奈美、スッ裸・・・」
亜沙美は小声で言った。
「同じポーズでいい」
麻奈美は胴体に両手をあて、左右の脚を軽く開いた。
「うん、いいぞ・・いいぞ」
カメラマンはやや興奮気味に言った。
一切の妥協を廃した、一枚の布も一本の糸もないスッ裸のダンサーの背中。
ほどよい筋肉で構成されている。さらに肌はうぶ毛が落ちたばかりの少女の輝くばかりの肌なのだ。ダンスでの上気は引きつつあるが血のめぐりが確実な「健康美」を醸し出している。
あっという間にフィルムはなくなった。
「よし、今度は両手を真上に上げてみろ」
「はい」
麻奈美は言った。もう息は普通に戻っている。
両手を高く上げた。
2、3枚シャッターが切られたがそこで終わった。
「う〜ん」
カメラマンは沈黙した。
「よし、OKだ。ご苦労さま」
「はい」
「最高の被写体だな」
カメラマンはその言葉を口の中だけで言った。

撮影が終わって3日後のことだった。
レッスン場に宣伝ポスターが届けられた。
宣伝ポスターはセピアカラーで2パターンあった。
「ああ、すごい!!」
ダンサーたちは声を上げた。
一枚は軽く脚を開き両手を腰に添えた一糸まとわぬ麻奈美のバックヌード。
その姿を邪魔しない程度の大きさの字でやや斜めに『裸を見に来い!!』のコピーが入っていた。
もう一枚もやはり麻奈美のバックヌードだが、これは極細のヒモでできたTバック姿。
コピーは『ス・ッ・パ・ダ・カ・で踊る!!』。
いずれも脇に小さく「熊倉哲男プロディース作品、ダンスレビュー『妖精』」とあった。
「また、ストレートなコピーね」
美和が言った。
さすがの麻奈美もバックとは言え、自分のヌードポスターに言葉がないようだった。
やがてレッスン場に熊倉が顔を出した。
「ポスターは首都圏の駅に貼られる予定だ。立派なものができたんだから内容が伴わないなんて評価は願い下げだぜ」

数日後、熊倉の予告通り、麻奈美のバックヌードのポスターは各地の駅にはり出された。
そして盗難が相次ぎ、テレビのワイドショーが騒ぎ始めた。
「あのバックヌードのモデルは誰?」
普通のヌードモデルの肉付きとはまるで違う。
雰囲気もスパルタン(禁欲的)そのものだった。
「熊倉のレビューに出るダンサーらしい」という噂がたった。
ただですら熊倉の存在は注目されている。
その熊倉プロディースによるレビュー。
熊倉のもとに雑誌やスポーツ新聞から取材の申し入れが入り始めた。
しかし、熊倉はレビューの本当の正体を明かさなかった。


 ★ミニ公演
「今日からプロモーション第2弾だ。まず、学園祭でミニ公演をやる。麻奈美、亜沙美・・」
ポスターが貼られた数日後、熊倉は言った。

康夫と隆はJ大学の2年生だった。まったく退屈な日々を過ごしていた。
「なんでも今日、学園祭のステージでプロのダンサーが裸で踊るらしいぜ」
「本当かよ」
「撮影はダメらしいぞ。ほらバックヌードのポスターで有名になった熊倉哲夫プロデュースのレビューのゲリラ公演らしい」
「でも全裸なのかな」
「そりゃないだろう。猥褻物陳列になっちまうからな」
康夫と隆が会場の体育館前のステージに到着すると数人が集まっていた。

その横についたてがあった。康夫と隆が覗くと、なんとそこには出番を待つ5人のダンサーたちがいた。
着替えをしているのだ。
「おい」
康夫は隆の頭を押さえた。
相手方から見えないように衝立の陰に隠れたのだ。
衝立は雑に立てられており、隙間だらけだった。
ダンサーたちはワンピースを足元に落として着替えを始めた。
足元にワンピースを落とすと後は何もない裸だった。
美しい肌とプロポーションをもった5人の生身のダンサーたちが二人の視線に入った。
5人は小さなエプロンのよう布切れを腰に付けた。
尻は完全露出・・いや、尻だけではなく股間にも何も覆い隠すものはなかった。全裸の身体で唯一の布きれだった。
ダンサーたちはレオタードを着けるつもりはないようだ。
「じゃあストレッチするよ」
麻奈美が言った。
「な・・なんだよ、あの“エプロン”」
「しっ」
ダンサーたちは思い思いに脚や腕を伸ばした。
その中の筋肉質の娘は倒立をした。
倒立すれば当然“エプロン”はめくれ上がる。
まったく恥毛のない股間があらわにされた。
「ダンサーって完全に剃っているんだ・・アソコの毛」
さらにそのダンサーは倒立開脚を始めた。
「ああ」
二人はそれしかいうことはなかった。
濃い茶色の脚の付け根がはっきりと見える。
ダンサーというものがどれほど凄いか、二人の大学生は目の当たりにした。
そう、一流のダンサーともなれば踊りに集中する。
どんなコスチュームだろうが関係ない。
「美しく踊る」
あるのはそれだけだ。
「踊るよ」
一人のダンサーが声をかけ、ラジカセのスイッチを入れた。
亜沙美たちが踊り始めた。
「まったく違う」
大学で見慣れているチアガールなどとまったく動きが違うのだ。
脚、腹、背中、腕。
鍛え抜いたしなやかな筋肉がすばやく収縮して踊りを形作る。
どんなコスチュームを着けようが、鍛えていないダンサーが踊るのでは人を魅了することはできない。
しかし、目の前にダンサーたちはコスチュームは不要だと二人は思った。
一人のダンサーに目がいった。そのダンサーはモデル並みの顔立ちとプロポーション、見事なダンサーとしての筋肉を持っていた。
「ダンサーが裸で・・・」
そのダンサーは麻奈美だった。
汗に濡れたきめ細かい肌。
大きな、それでいて垂れず上を向いた乳首と乳房。
「むん」
麻奈美は大きく脚を蹴り上げた。
バレエでいうグランバットマ。
正面への大開脚だった。
「ああん」
あまりにも勢いよく脚を上げたため、股間を隠している“エプロン”のヒモが切れた。
「エプロン」ははらりと麻奈美の足元の落ちた。
「おわああ」
麻奈美の股間の奥を目撃してしまった二人は小声で叫んだ。
しかし、麻奈美はそのまま、踊り続けた。
「亜沙美、“アクロバット”やろうよ」
「うん」
麻奈美と亜沙美はリフトなどショーでやる“アクロバット”を始めた。
康夫は小学生の頃、行ったサーカスを思い出した。
テントの陰で外人女性のサーカス団員がコスチュームも下着も脱いでスッ裸で体操やストレッチをしていたのを目撃したのを思い出した。
『アクロバットする女は、人は見てないと裸でやるのかよ』
麻奈美は亜沙美の支えで見事なリフトを決めた。
亜沙美は麻奈美をリフトしたまま、一回転した。当然、二人にも見える。
「ねえ、本番ではやっぱりエプロンするんでしょう」
と亜沙美。
「全部・・取っちゃうというわけにはいかないでしょう」
亜沙美たち、ダンサーのストレッチは続いていた。
そこに文化祭の実行委員の女性が入ってきた。
全裸ストレッチに少しびっくりしたようだった。
「なにか」
「あの、もうすぐ出番なんですけど、その全裸では・・」
「わかっていますよ」
リーダーである麻奈美は言った。
「ご心配なく。ちゃんと準備はしてきましたから」
ダンサーたちはバックから何か取り出した。
「おい、なんだあれ」
肌色のバンドエイドを大きくしたようなものだった。
「シール貼るよ」
「シール?」
麻奈美たちはそれを股間に貼り始めた。
「えっ」
バンドエイドはダンサーたちの股間の谷間を隠す特製シールだったのだ。
貼り終わった亜沙美は思い切り正面に向かって開脚した。
「見えてない」
正面に回り込んだ麻奈美に聞いた。
「うん、見えてない」
今度は麻奈美は四つんばいになった。
「これってよく後ろから見えちゃうからいやよね」
「うん、平気」
麻奈美は立ち上がって、開脚をしてみた。
シールを付けた麻奈美はほんとうに全裸のように見える。
熊倉は当初、本当の全裸でのダンスを計画していたが、大学当局からクレームがきそうだということから「シール」を考えたのだ。
「ああああ」
シールのまま、ストレッチを続けるダンサーを目にした隆はズボンの中で射精してしまった。
スッ裸のダンサーを目の前にしては射精しない方がおかしい。
実は亜沙美は「のぞき」に気づいていた。いや、ダンサーたち全員が気づいていたのだ。知っていてわざと挑発してみせた。
亜沙美は大胆にも覗いている衝立の隙間に向かって横になってY字バランスの脚上げをした。当然、股間は見えている。しかし、生ではない。
それが渇きを煽る。セックスへの渇きを煽ってみせているのだ。
「ぐ・・くそう」
目の前に触れたい女の身体があるのに・・。
触れられない。触れてはならない。
それが心に葛藤を呼び、暗い情熱を起こす。
「ああ」
康夫の方もパンツの中で射精した。

舞台の袖まで亜沙美たちは来た。
「さっきのノゾキ。出しちゃったのかな」
麻奈美は亜沙美に聞いた。
「出しちゃったでしょう」
亜沙美は言った。

麻奈美や亜沙美たちはガウンを着けて、すでにステージサイドにいた。
もちろんガウンの下は裸だった。
ただ、一つ・・いや一枚だけ、股間を小さなシールが隠していた。
「ねえ、やっぱりシール貼るのかな」
「貼れってさ。やっぱり『公衆の面前』だから・・」
客は100人以上がステージの前にいた。
「なんか、かえって恥ずかしいね」
「カメラは禁止って一応言ってあるでしょうね」
ついてきた代理店の女性に麻奈美は聞いた。
「一応ね。ただし、写真雑誌のカメラマンが撮影にきているわ」
「えっ、聞いてないわよ」
「メディアがどこもいないんじゃあ、プロモにならないわよ。ちゃんとゲラチェックの条件をつけたの。顔は目隠しするわ」
「・・・」
もう文句を言っても遅いのだろう。5人は初めから抗議はあきらめた雰囲気だった。
「よし、もうすぐよ」
前のバンド演奏が終わって、片づけが始まった。
5人はガウンを脱いで最後のストレッチを始めた。
「ああっ」
ステージ係の女子学生がそれを見て唸った。
ここ数週間のレッスンで完璧な肉体となった5人のダンサーがそこにいた。
乳、腰、そしてくびれ・・。
女をも魅了する女身体だった。
亜沙美は思い切り右の脚を高く上げた。
苦もなく脚を上げる亜沙美にステージ係の女子学生が言った。
「その格好で踊るの」
「はい、そうゆう契約だから・・」
「プロなんだ」
「はい」
「・・・・」
女子学生は亜沙美に注目していた。
「いやらしいですか」
今度は亜沙美が聞いた。
「ううん、全然・・。かっこいいわよ。すごくきれい」
「うれしい。ありがとう」
身体が暖まったところで紹介のアナンウスがあった。
「次は、再来週、ダンスレビュー『妖精』を公演予定の『妖精』ダンサーズです。ではどうぞ」
麻奈美が言った。
「いくよ」
「おう」
5人はステージに登場した。

「ああっ」
観客からどよめきが上がった。
5人の少女が裸で登場したのだ。驚かない方がおかしい。
5人はそれぞれのポジションについた。
ビートの効いた音楽が始まった。
5人の少女・・全裸のダンサーたちは・・時にシンクロさせ、時に別々となり踊りを組み立ててゆく。
音楽の中盤で短いラインダンスが入った。
数回のハイキックが一本の脚もまったく乱れず高く上がる。
『あっ』
亜沙美は脚を上げながら口の中で叫んだ。
股間に貼った『前バリシール』が汗ではがれそうになっているのだ。
脚を動かす時には邪魔だった。
ダンスのフィニッシュでは右脚を高々と上げるポーズを決めなくてはいけない。
しかし・・・。
亜沙美は決意した。
ポジションが入れ替わる時に、股間の前をさりげなく手を通過させた。
「おあっ」
数人の見物客は「ハプニング」に気が付いたようだった。
亜沙美はすばやく股間のシールをはがしたのだ。
亜沙美が・・女子高校生が多くの人の目の前で一糸まとわないスッ裸になった。
全裸の女子高校生は踊りをやめなかった。
かえって気合いが入った感じだった。
亜沙美はシールを舞台脇に放った。
「亜沙美・・」
麻奈美が亜沙美を小さい声で呼んだ。
しかし亜沙美はトランス状態に近く気づかなかった。
ダンスのフィニッシュが近づいた。
「りゃ」
亜沙美は小さく気合いを入れて右脚を高々と上げるポーズを決めた。
股間を隠す物は一切なかった。

(つづく)


目次