「Tストラップ架空誕生秘話」


このお話は日本でスポーツ用のTストラップという下着がこう誕生したであろうということを勝手に想像して構成したものです。もちろん歴史的事実には基づいていないことを最初にお断りしておきます。

1970年代前半、某月某日、某ダンス洋品メーカー商品開発室

開発室長(50代)「さて、新しいダンス用ファンデーション(下着)についてですが、今日は現役のバレリーナの方にも参加してもらいますのでよろしく」
バレリーナ(20代)「よろしくお願いします」
室長「さて、この前、縫製に頼んだ試作品できたかな」
男性室員A(30代)「はあ、一応できたんですか・・・」
と、テーブルの上に数枚の試作品を出す。
男性室員B(20代)「ちょっと、前布が小さいような・・・それに後ろがヒモだけですよ」
女性室員A(20代)「これでいいんです」
女性室員B(20代)「アメリカのカリフォルニアではエアロビクスという新しいスポーツが流行して、日本でもまもなく流行すると思うんですが、そのレオタードというのがかなりのハイレグなんですよ」
男B「ハイレグって?」
女B「くりを腰骨くらいまで上げて脚を長く見せることです。Bクン、開発担当なら少しは勉強してよね」
男B「すみません・・」
女B「で、ですね、その下着っていうのが『Tバック』と呼ばれているものなんです。後ろから見るとTの字に見えることからそう呼ばれています」
男A「なぜ、そんな形に?」
女A「まず、激しく動くと、普通の下着ではそのハイレグレオタードから出てしまうんです。それならいっそのこと後ろの布はない方がいいわけです。それにエアロビクスというのは有酸素運動で汗がすごく出るんです。それでなるべく布部分が小さい方が着用していて気持ちいいんです。この『Tバック』を参考にしました」
室長「ほう、でウチの発売する新製品はどうなんだ」
女B「アメリカでは『Tバック』は布をお尻の谷間に沿って、生地を切っていますが、ウチの場合は思い切って後ろをヒモにしました」
バレ「(試作品を手にとって)ちょ・・ちょっと、凄いですね。穿くのに勇気がいるような・・」
女B「その代わり、前布のクロッチ(股布)はマチにしてゴムを入れてアコーディオン式にしています。これなら左右に脚を開いても食い込みません」
女A「そうなんです。問題は食い込みなんですね。日本でも多くのエアロビクスをやる女性が問題としてるのがお尻と股間への食い込みなんです」
男B「しかし、この形で日本人女性に受け入れられるのかな。これじゃまるで『ヒモのフンドシ』で羞恥心が邪魔をしそうな・・」
女A「ちょっと、その『ヒモのフンドシ』って何よ!!」
女B「そうよ。第一、ショーツを外にはみださせる方がよっぽど恥ずかしいことなのよ。それなら中に『ヒモフン』穿くほうを選ぶわ!!」
室長「まあまあ、落ち着いて・・」
男B「す・・すみません。『ヒモのフンドシ』は取り消します」
男A「しかし、問題はないわけではないと思いますよ。まず、肛門は丸出しでそこをヒモが通るわけでしょう。気持ち悪くないかな」
女A「確かに肛門は丸出しですけど、性器と尿道は隠していますよ。これくらいなら平気だと思うけど・・」
室長「バレリーナさんの意見はどうでしょうね」
バレ「そうですね、確かに気持ち悪いと思います。だけど、この形は舞台なんかのコスチュームの時以外には穿かないと思うの。レッスンの時はここまで過激なショーツを穿く必要はないし・・・。『ここ一番』の公演の時だけなら我慢できるかなと思います」
室長「う〜ん」
バレ「ヨーロッパの人とか日本人のプロダンサーなんかいままで、舞台公演の時には何も穿かないでやっていたから喜ぶでしょうね。私もよくわかりますが、全裸と下着ありでは精神的にまったく違いますから」
男B「えっ、公演の時には『穿かない』んですか?」
バレ「はい、特にモダン(バレエ)の時なんか。でも『穿かない』とやっぱり不安なんですよ。全裸の身体にコスチュームだけでしょう。身体は見せるのはいいけど『女の谷間』もお客さんに見られると思うと恥ずかしいですよ」
女B「(男性室員Bに)余計な質問しないの。勉強不足よ」
男A「エアロビクスやバレエはいいとして、レオタードの市場は体操や新体操、バトンとあるけど汎用性はあるのかな」
女A「その質問、あると思っていたわ。キーポイントはハイレグです。日本人の体型ってもともと短足。脚を長く見せるためにはこれからはどのレオタードもハイレグ傾向になりますよ。その方がかっこいいから。そうなるとこの手のショーツって必ず売れます」
女B「ハイレグって日本ばかりの傾向じゃなくて世界的な傾向なんですよ。運動する時に脚がよく動くからです。それなら日本以外でも需要があるはずでしょう」
室長「そうね。それにウチの商品は輸出もあるからアメリカにも、ヨーロッパにも売れる製品がベストだね」
男B「あのう、どうしても気になるんですけど・・恥ずかしくありませんかね。こんな前布だけのモノ穿いて・・」
室長「この質問はやはりバレリーナの方の意見を聞こうじゃないか。女性陣の主観的意見だけじゃなくてね」
バレ「はい、たしかにハイレグってすごくいいんですよ。でも、問題なのはやはりその状態でショーツがはみだすことです。これはものすごく恥ずかしい。それなら見えないようなショーツがいいですね。ちょっと覚悟すればBさんのいうような『フンドシ』と呼ばれようが穿きますよ」
室長「どうやら結論が出たようだね。中年の私には抵抗が大きいがね」
女A「それでは製品として採用していただけるんですね」
室長「ああ、量産できるように製造の方と話してみるよ」
女B「やった!!」
室長「さて、製品名のアイデアだけど」
女B「はい、私にアイデアがあります。フランス語の小さいのプチとパンティを組み合わせた言葉はどうでしょう。かわいい響きがあると思いますよ」
男B「ああっ、スキャンダルとパンティを組み合わせて作った『スキャンティ』みたいにするんですね」
女B「バカ!!」

(おわり)



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